【エッセイ/物語】物語を書き終えて

2021/2/27

 つい先日、数年にわたって書いてきた物語を完結させることができた。今は若干の燃え尽き症候群気味になりながらも、静かな達成感を抱きつつ、何よりほっとしている。一応のこと電子書籍として形にしたし、幾つかのWEBサイトにも載せておいたので、これでもう自分が事故で突然死んだりしても物語が消えて無くなったりはしない。無事に作者としての責任を果たせたことに安堵している。

 

 自分で実際に物語というものを書いてみて、色々と考えたり感じたことを覚えているうちに書き残しておきたい。実のところ、もう書いていた時のことをよくは思い出せない。執筆中はあんなにヒーヒー言いながら書いていたはずなのに、いざ終わってみるとこんなものだ。人は過去を美化するか、単に忘れ去る。だから記録を残すことは大事なのだと思う。物語を書いてきた中で沸き起こった感情や考えにはまだ整理の付いていないものも多々あるが、その現在地を記録しておくという意味で、また今まで自分がしてきたことを総括する意味でも、ここに一度とりとめのない所感を残しておこうと思う。

 

  • なぜこの物語を書いたか
  • 物語を作るということ
  • 作品を書き上げてみての反省
    • 語彙不足
    • 叙情描写と叙事描写
    • 物語の長さ
    • 物語の視点の問題
    • 連載という形態
  • 作者、作品、読者の距離
  • 創作の恍惚と不安 
  • 今後の抱負

 

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【エッセイ】映画「フューリー」を観る。良心、父子、家。

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 戦車ロマンが爆発してるミリタリーマニア向け映画なのかと思っていたが、良い意味で予想を裏切られた。多少のヒロイックさはあるものの、戦争の目を逸らしたくなるような醜い部分も、一方で否定できない心躍る楽しい部分もきっちり両面描き切っていた。連合国が正義とかナチが悪とか、そういう矮小化した描写に陥ることなく、戦争そのもの自体について中立的な描き方をしていた印象。前に「1917」を観たときはあまりにも映像美が過ぎていて、「おいおい、戦争を出汁にしてこんなアーティスティックなもの撮っちゃって大丈夫か」と少し心配になったけど、こちらはその点バランスが取れていた。

 

 公開時の国内宣伝ではやたらと戦車を前面に押し出し騙されたが、別にそれほど戦車映画という訳でもなかった。

 

 この物語では「良心」というものが一つ大きなテーマだった気がする。

 自分は良心を守るために人を殺したくないと言うノーマンが、白リン弾で焼かれた兵士を自らの意思で撃ったのは良心から来る慈悲によるものだった。エマを殺されて敵兵士に憎しみを抱いたノーマンも、最後は心あるSS隊員の慈悲により命を救われる。エマを殺された後のノーマンは「マシン」というあだ名を付けられ、慈悲無く敵を殺戮する「兵士(戦争機械)」へと生まれ変わりそうになったが、最後はあのSS隊員(きっと彼も間もなく戦場で殺されただろう)のおかげで、そして軍曹のような心ある人間の下で戦ったおかげで恐らく「人間」として踏みとどまれたような気がする。

 劇中の印象的な白馬は、途中の馬にまつわる会話から見るに、良心の象徴のような存在なのだろうと思えた。

 

 ブラピ(軍曹)とノーマンの父子みたいな関係性も物語に深みを与えていた。あだ名がウォー”ダディ”だし(これはアメフトの主力選手を指すスラングらしい)、ノーマンとエマに気遣ってわざと上半身脱いでみたり(ついでに「二人は若い、そして生きてる」とか言ってみたり)、もうお前完全にお父ちゃんだろと。序盤で無理矢理敵兵を撃たせるのも、躊躇無く撃てるようにならないとノーマン自身が殺されてしまうし仲間も危険にさらす。それに何より、ノーマンの様な若い兵士がその優しさや弱さのせいで沢山死んできたのを嫌というほど見てきたに違いない。あのある意味”筆おろし”的な行為も、父として息子に(自らも苦しんでいる最中の)厳しい現実をたたき込むシーンだった。多分観客はみんなノーマンに感情移入してブラピ酷い!と思うシーンだけど、観ながらパパの心中お察ししあそこで不覚にも泣いてしまった。

 

 長年従軍してきた軍曹にとって、戦車は自分の「家」であり、在るべき場所であり、仲間も皆家族同然の存在だったのだろうと思う。単なる戦車に対する愛着とかそういうものではなくて、もっと実存的な何かだったように思う。本当は誰よりも信仰に篤く良心を持つ者として、誰よりも戦争の中で良心の呵責に苦しんでいるはずの軍曹が、何とも言えない表情を浮かべながら「ここが大好きだ」というシーンが全てを物語っている気がした。

 

 題名の「FURY」は激怒なんて意味だが、この言葉はローマ神話の復讐の女神フリアエから来ている。劇中でも彼ら兵士の激しい怒り(殺意)は復讐心によるところが大きい。戦争が復讐の連鎖であるという一面をよく表した題名だなと感じた。

 

 演出の面でも、仲間と一緒に死線を越える軍曹の”家族愛”と、”祖国愛”を煽りながら突撃命令するだけして自分は逆方向に帰ってくSS士官(お前も戦え!)が良い対比になってたりして、この監督のそういうさり気ない描き方が好きだ。

 良い映画だった。いずれデヴィッド・エアー監督の(スーサイドスクワット以外の)他作品も観てみたい。

【エッセイ】(サイレントヒル精神的後継作と噂の)「The Medium」クリア後感想

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はー、最高。(完)

 

 

一応これが21年最初にクリアしたタイトルになる。新年早々GOTY級が来た。ゲームとしては中規模の凡ゲーなのでGOTYまでは取らないだろうが、サイレントヒルの精神的後継作というだけで個人的にゲームオブザレイワぐらいはあげたい気分。

 

 

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【エッセイ】ゲーム「アサシンクリード ヴァルハラ」クリア後感想

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2020 12/8 「アサシンクリード ヴァルハラ」をクリア

 メインシナリオを全て終えるまでの総プレイ時間は約90時間。収集要素はまだ残っているので、完全制覇するとしたら150時間くらいはかかりそうなボリュームだった。次は21年春頃にディスカバリーツアーモードが追加される予定なのでそれが出たらまた遊んで、その次は大型DLCの発売を待つ。アイルランドDLCが特に楽しみ。

 

 

 

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【エッセイ】ドラマ「アップロード シーズン1」雑感。

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Amazon Primeで配信中のドラマ「アップロード」のシーズン1を鑑賞。中々面白かった。コメディ、SF、ヒューマンドラマの塩梅が丁度良くて毎話楽しく観てました。海外ドラマは1話1時間くらいのが多い中、1話30分というのもスキマ時間に観やすくて良かった。

 

結構最近始まった作品らしく、もうシーズン2が決まってるそうで。シーズン1の終わり方も続編に続く気満々な感じ。え、そこで終わっちゃうの!?ってなりましたね。これからネイサンやノラがどうなっていくのか楽しみです。

 

今回は鑑賞直後の雑感なので、ゆる~く感想を。

 

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【エッセイ】ドラマ「ウエストワールド シーズン1」雑感。

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久方ぶりにこんなに面白いドラマを観た。

天邪鬼な逆張り野郎なので、いつも流行ってるドラマ・映画なんかは安定の総スルー。ブレイキングバッドもゲームオブスローンズも、みんなが楽しみ尽くして流行が完全に終焉した頃に独りで見始めて、「なんだこれ!超おもしい!」とかはしゃいでる残念なタチである。今回も例に漏れない。

けどウエストワールドって、24やGoTほどは話題になっていなかった気がする。 あらすじをそれとなく眺めて興味を抱くまで、このドラマの存在というものをてんで知らなかった。これは(日本においては)隠れた名作と言って良いと思う。

今回は「雑感」なので、とにかくこの傑作ドラマの良かった部分や好きなとこについて書き殴るだけの文字の暴力であり、分析的なレビューとかは気が向いたらまた書くかもしれない。とにかく今回はこのドラマがとんでもなく素晴らしいということだけ理解してページを閉じてくれたら結構であります。

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【レビュー】映画「カンナさん大成功です!」あらすじと感想

約8年前に自分で書いて存在を忘れていたブログと記事二つを見つけ、改めて読んでみたところ割と面白かったので誤字のみ訂正しこちらに転載しておく。2012年9月24日執筆。 

 

 

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【レビュー】映画「この森で、天使はバスを降りた」あらすじと感想

約8年前に自分で書いて存在を忘れていたブログと記事二つを見つけ、改めて読んでみたところ割と面白かったので誤字のみ訂正しこちらに転載しておく。2012年8月21日執筆の記事である、懐かしい。

 

 

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