【エッセイ】(サイレントヒル精神的後継作と噂の)「The Medium」クリア後感想

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はー、最高。(完)

 

 

一応これが21年最初にクリアしたタイトルになる。新年早々GOTY級が来た。ゲームとしては中規模の凡ゲーなのでGOTYまでは取らないだろうが、サイレントヒルの精神的後継作というだけで個人的にゲームオブザレイワぐらいはあげたい気分。

 

 

 

「二重現実」システム

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このゲームは何と言っても演出が凄まじい。
開発者自身によって「二重現実」システムと名付けられた、何とか例えようとするならば、サイレントヒルの表・裏世界を一画面で同時プレイ的何か。

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これはさすがに観たことなかった。今のところ唯一無二。これって要するに二画面分描画してることになるからかなりのレンダリング負荷がかかってるはずで(実際XSXでも一画面あたり900pまで落とされてるらしい、けどほとんど気にならない)、次世代機ならではのハードパワーを存分に発揮してハッタリ効かせた演出だなと感じた。これをババーンと次世代機発売日に同時リリース出来てたら相当インパクトあったろう。

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ストーリー

ストーリーは「自分が本当は何者か」とかそれ系のやつで、まあ予想は付くっちゃ付く割と王道な感じではあったが、クライマックスの怒濤の展開と演出に全部持って行かれた感。発砲音だけ聞こえて絵は見せず、プレイヤーに解釈を委ねるラスト。センス良し。

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そもそもタイトルの「The Medium」って何なのかと調べてみると、中々上手い題名を付けたなと感心。まず「霊能者」って意味があってこれはもうゲームの内容まんま。そしてもちろん「中間」という意味もあり、「二重現実」の狭間を進んでいくストーリーをよく表してるし、あとは何かの「媒介」だとか「(生物の)生息場所」なんていう意味もあるらしい、これまたゲームの中で出てくる人間に取り憑いて着ぐるみ代わりに使い捨てるアイツを思うとまさにピッタリのタイトルである。

そういえばやたらとがモチーフで出てくるこのゲーム。主人公マリアンも蝶の羽半分になってるネックレスとか付けてて、「どうせ双子の片割れとかなんだろな」と初っ端からすぐ予想が付けられる訳だが、この蝶というのも実は蛾とあんまり区別のない曖昧な虫だったりするので、二重現実のメタファーなのかもしれない。あとは羽化からアイツが連想できたり。とにかく作品の核心に関わる重要なメタファーなのは確か。本作を作ってるBloober Teamは毎回そこら辺かなり作り込んでくるので、海外の鬼考察勢がこれから色々見つけてくれることだろう(他力本願)

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ベクシンスキー美術の3D映像化f:id:yano140:20210130152454j:plain

ベクシンスキー作品にインスパイアされた背景美術、その退廃的な美が素晴らしい。ベクシンスキーと開発のBloober Teamと、ポーランド繋がりとのこと。サイレントヒルは血と錆の世界だからもっと禍々しい感じだけど、ベクシンスキーの描き出すあの世はどっちかというと長い年月をかけて朽ち果てていく世界みたいな雰囲気で、その物寂しい感じが良く出てた。固定視点で見せられるともうほんとベクシンスキー絵画みたいで、これファンはたまらない筈。このアート部分だけでもプレイする価値はある。あった。

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サイレントヒルの45%は山岡晃の曲で出来ている

何で45%なのか。なんとなく。サイレントヒルを語る上で欠かせないのが、何と言っても山岡晃の音楽。そのため古参ファンはこれが聞こえてきただけでノスタルジーの洪水が押し寄せ涙ちょちょぎれる訳だが、やっぱりBGMに山岡晃を起用したことでこの作品も上手いことサイレントヒル的オーラを纏うことが出来た気がする。(実際ゲーム性は割と違う)

プレイヤーもこのゲームの「二重現実」よろしく、The Mediumを遊びながらサイレントヒルをも遊んでるかのような、多重レイヤーを通して作品を観てる感じになっていて大変効果的なBGMだったと思う。

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ホラーADVゲームとしては凡作

二画面同時描写の「二重現実」システムは本当に凄かったが、正直なところレベルデザインの方はまだまだ一流作品には及ばないなという感がある。まだ歴史が浅いスタジオなので、あと何作か作っていくうちにそこら辺は洗練されていくだろう。

 

まだまだ現役、固定視点

このゲームを遊んでいて一つ意外だったのは、「固定視点の効用」。

この「The Medium」、2021年発売のサードパーソンゲームだというのにまさかの固定視点採用タイトルで、これまた昔のサイレントヒルを愛するファン達のノスタルジーを刺激してくれるわけだが、意外とこれがしっくり来る。

上にも書いた通り本作は背景美術にかなり気合が入っていて、固定視点だとアングルを固定できるので止めの画がめちゃくちゃ映える。こういうアート的な作品には固定視点はかなり向いている。

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あとは、固定視点のカメラワークにすると視点移動があまり無いのでフレームレートを低くしても映像が見劣りしないし、目も疲れない。そんな理由でこのゲームもCS版は30FPS固定になってるが、その分画質がリッチになっていて、とにかくグラフィックがすごい。自分は基本的にフレームレート至上主義者だが、ここまでグラフィック綺麗なら30FPS固定でも全然アリに思う。

そんな感じで、このゲームを遊んで再び固定視点の復権を感じた。この先も作品によってこの固定視点は有効な技法として残り続けていくだろう。

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てな感じで、サイレントヒルファンとしても、ベクシンスキーファンとしても大満足であった本作「The Medium」。ゲームパスでタダで遊んでしまってちょっと申し訳ない気持ち。これは是非続編作って欲しいと思う。4くらいまで作って欲しい。そんでもってネタが尽きてきたら「The Medium:Origins」とか「The Medium:Homecoming」とかやれば良い(笑) 頑張れBloober Team。これからも要注目のスタジオであります。

 

終わり