【エッセイ】ドラマ「アップロード シーズン1」雑感。

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Amazon Primeで配信中のドラマ「アップロード」のシーズン1を鑑賞。中々面白かった。コメディ、SF、ヒューマンドラマの塩梅が丁度良くて毎話楽しく観てました。海外ドラマは1話1時間くらいのが多い中、1話30分というのもスキマ時間に観やすくて良かった。

 

結構最近始まった作品らしく、もうシーズン2が決まってるそうで。シーズン1の終わり方も続編に続く気満々な感じ。え、そこで終わっちゃうの!?ってなりましたね。これからネイサンやノラがどうなっていくのか楽しみです。

 

今回は鑑賞直後の雑感なので、ゆる~く感想を。

 

 

死後に人格が仮想世界へアップロードされる世界

このドラマは2030年代くらいの近未来を舞台にしていて、その時代では人間の脳内がスキャンできるようになり、人は自分の意識を仮想現実の世界にアップロードすることができる、という設定。主人公ネイサン・ブラウンは交通事故で重症を負った後、恋人にアップロードさせられて、レイクビューというホライゾン社が運営するバーチャル天国みたいな仮想現実で暮らすことになる。

 

このアップロードされる時の描写が結構酷くて、病院の機械で頭のスキャンをした後、元の身体の頭は吹っ飛んでしまう。何気にグロい。コメディ調だけど結構グロい描写を混ぜてくるので油断できないドラマです、笑えるグロさではある。

 

何で元の身体の頭を無くさなきゃいけないかというと、もし人間の脳をスキャンしてそっくりそのままの人格をデータとしてコピーできるようになったら、元の身体の人格と、VR世界のデータの人格と、この世に同じ人間の人格が二つ存在するようになっちゃうからなんだろうと思います。両方が自分こそがネイサンだ!あっちは偽物だ!とか言い出したら大変ですね、それは色々困るわけです。だからといって頭吹っ飛ばされるのも嫌だ。

 

あとこのドラマの世界では、アップロードされることでVRの中で永遠に生きられるように考えている節があるんだけど、それって客観的な視点に立った場合の話で、自分自身の主観的な視点では結局自分は死んじゃってるんですね。

 

これはちょっと哲学的な話になっちゃうが、元の身体が死んだ以上、そこで意識は一回完全に途切れているので、その後にアップロードされたVR上の意識は果たして自分自身なのか?という問題が出てくる。VR上に転送された自分の記憶を完璧に保持したデータの人格はまるで自分のように振る舞うんですが、アップロードされる前の自分とは確かに違う存在なんです。連続した意識とか、自我の話の上では。でも他人から見たらそんなの分からないですね、だって今までと同じに見えて、実際違いも無いから。

 

だから結構この話怖いなぁ~と思いながら観てましたね。家族や恋人は良いだろうけど、自分は結局死んでるじゃん!って感じで。大事な人の死っていう苦しみを避けることが出来る点で意味が無いとは思わないけど、自分自身が永遠に生きるっていうのには程遠いなぁと思った次第です。結構ふざけたコメディなんだけど、こういう深いテーマについても考えさせてくれて良いドラマだなと思いました。

 

あの世(ヴァーチャル天国)はつらいよ

それでこのドラマのお話としての肝って言うのは、人間がテクノロジーを使ってどんな風で仮想現実の天国を作り上げるかっていう所なんですが、そこも今作では面白おかしく、けれどもある程度のリアリティもあって納得行く感じで書かれていて大変面白かった。

 

まず主人公がアップロードされたレイクビューというVR世界は、ホライゾン社という営利企業が運営してるので、普通に資本主義社会のルールで動いてるんですね。これがまた世知辛い。

 

天国なのに何をするにしても金がかかる。勿論無料のご飯とかはあるんだけど、何か変わったことをやろうとすると課金が必要になる。主人公の隣人なんて風邪を引くのに1分1ドル課金している始末。くしゃみは2ドル。いざ死んでみると、鼻水垂らすのまで恋しくなるんですかね。

 

多分何事にも課金が必要なのはVR世界の住人達が何かやる度にデータ通信とか演算負荷がかかるんで、その維持費のためってことなんでしょう。あとVR内に作られたコンテンツ制作の人件費とか。じゃあVR内の住人が自分で家具とか作れば良いじゃんと思うかもしれないが、それは駄目なんですね。アップロードは労働禁止らしいです。死者が労働し続けたら生者はみんな失業しちゃうので。

 

だからレイクビューに入居するためには、まず基本使用料があって、それを毎月払える遺産を残したか、経済力のある遺族が居る人だけ住み続けられる訳です。イメージとしてはあれですね、現実でまだ生きてる遺族が檀家で、お坊さんのホライゾン社にお心払うのやめたら死者の魂ごと消されるみたいな。ひどい世界だ。

 

まあでも確かに、人間が有限な現実の中に人工的な天国を作ろうとしたら必ず誰かが管理する維持費がかかってくる訳で、割と現実的な設定ではありますね。昔どこかの政治家が「最後は金目でしょ」なんて言ってましたが、未来には本当に最期が、いや最期のその先まで金目で決まる時代が来るのかもしれない。どうせあの世に金は持ってけないから生きてる間にパーっと使っちゃえ、なんてのも出来なくなってきますね。永遠に続く節約生活、やだなぁ…。

 

こういうヴァーチャル天国が技術的に可能になる前提としては、①人間の脳の中身をスキャンして人格をコピーできるようになることと、②コピーされた人格が元の人間の様に思考できるアルゴリズム、つまり人間の心を再現出来るようになること。③VR内で五感の感覚を再現することくらいですかね。③くらいは割と早く出来そうだけど、いやー、まだまだ先は長そう。少なくともドラマの2033年には無理ですね。自分が生きてる間に実現しなさそうで良かったです。

 

 

そんなこんなで取り留めなく色々書きましたが、肩肘張らずに気軽に楽しめるドラマなのでこれは是非おすすめですね。良かったら観てみて下さい、アマゾンプライムで配信中。全10話で一話約30分だから5時間くらいで全部観られる感じです。


ちなみに、個人的に今作で一番お気に入りのキャラはOwen Danielsって役者さんがやってたレイクビュー内のAIアシスタントですね。住人の世話してるんですが、スキンが一種類しか居なくて全部同じ顔。いつもニコニコしてて妙にクセになってくるお顔。赤毛がすごい鮮やかでしたね、あれ地毛なのかな~

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